なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(12)

父北村雨垂とその作品(12)
 
「あしかび」
 
へうへうと 風たち騒ぐ 虚無の有
深淵なんぞ 一点無限 まるい角
世界をはらむ 夢がみた夢
コンパスが 白夜 四角を 画に描いた
大地なき 足下に動く 非有非無
深淵の中の 偶然の 壁
偶然の壁に 矛盾の合理 満つ
昨日なき 陣痛終る 過・現・未
葦芽を生む 靜止なき靜
 
「ペンギン」
 
第一部
夢だった 道化師 汗を握ってた
千仭の底へ いしくれ おどるのだ
時間 空間 貨幣 ( きん )の 王冠
 
第二部
くるくる眞晝 目玉のうえの 道化師だ
笑ってる 鬼の面だよ いしくれ だ
主観 客観 貨幣 ( きん )の 王冠
 
第三部
道化師を消す 黒幕が おりたのだ
水に浮く それをいしくれ 夢にみた
羅漢 円環 貨幣 ( きん )の 王冠
 
「秋」
 
なんとなく わらひそこねて 秋をみる
黒染の 汝を 秋と應えたり
黙すれば なを怖しく 秋迫り
闖入者 そんな気持に 秋がみえ
秋や踏む 落葉の中に 青のあり
 
慾深き ひとの微笑を 秋がみる
気狂の こころに近く 秋澄める
黒い土 秋の下から生まれたか
人絹の白さだ 秋の灯が 点じ
子は右を 秋は左の道を 往く
 
辛辣な 蜘蛛の糸より 秋の陽光
従容と服す 大地に 秋の猊
至極 平凡に 時計が 秋を鳴り
秋の心臓の さてさて 雁来
都落ち さうした雲に 夜の秋
 
音を喰う 秋の たそがれの 個性
水底にゐて 水をみぬ 秋の石
来年を 地下一寸に 秋が置く
読みかけた一冊 秋の まくらもと
街路樹を さいなむ雨も 秋なりし
 
秋の おどけた表情に 夢珠沙華
惨劇を 描けといふか 秋の晝
もの終る 白いけむりで 秋 暮れる
草や木は 秋へ好意の 色ならじ
さかづきに 秋をうつせり 灯が ひとつ
 
秋を 芽は 二寸伸びたり 不憫さよ
老人は 悟れた秋も みえにけり
家計簿に 赤字は 秋の たわむれか
死ねもせぬ 秋を泣けとて 朝が来る
吾れ 憎むこころ なけれど 去れか秋
 
 父の句の中には、この「秋」の連句のような多少抒情を感じさせてくれる句もあるようです。何時ごろの作品かはわかりません。