なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

黙想と祈りの夕べ通信(348)復刻版

 黙想と祈りの夕べ通信(348)復刻版を掲載します。2006年5月のものです。

    
      黙想と祈りの夕べ通信(348[-35]2006・5.28発行)復刻版


 今月の終わりにありますS女学校の高2の自然教室の講師を頼まれています。「出会い」というテーマ

なのですが、準備に今まで読んだ本を幾つかざっと読み直しています。その中に私たち人間が生きていく

ときに、ほぼ三つの、それぞれ関わりますが、一緒くたに考えない方がよい、区別して考えるべき位相が

私たちにはあるということが書かれていました。その三つとは、個人としての個人、社会的な個人、家族

の一員としての個人です。

「社会的な役割を生きる自分(ぼくはこれを「社会的な個人」と呼びます)と、性格や内面も含めた個人

としての自分(こちらは「個人としての個人」と呼ぶことにします)を、きちんと分けておくことです。

この両者を一緒くたにしてしまうと、はた迷惑ですし、自分も傷つくことが多くなってしまうと思いま

す」。「仕事というのは、ただやみくもに頑張ればいいというものではありません。仕事の場で自分の人

間性までを評価されようとする人は、頑張っていることそのものによって、他人を傷つけることがありま

す。仕事で役割を果たす自分と、取り替えのきかない個人として存在する自分を、理念の上できちっと分

けて考える。それができなければ、仕事での評価と、人間としての評価をごちゃまぜにすることもなくな

ります」。「自分がやっていることがどんなに価値のあることであっても、それを『こんなにいいことな

んだからお前もやれ』と押しつけたり、手伝わせたりするのは間違っています」。「ぼくが考え出した結

論は、誰かがさぼったら、そいつを糾弾したりせずに、同じグループの仲のいい奴らで、そいつの分もだ

まってやってしまうのがいちばんいいということでした」。「人を動かすのは自由な意思の力だけ。それ

以外の名目で人を従わせるのは愚かなこと」。島尾敏雄は戦争中、奄美諸島の小さな島の海軍基地の隊長

として最前線にいた人です。そこでは人間魚雷で敵の艦船に体当たりする訓練が行われていました。もち

ろん、生きて帰れることはまずありません。死を前提として敵に突っ込んでいくのです。・・・出発がもう

間近に迫ったとき、特攻攻撃のための艦艇を格納している洞穴を拡張するようにという命令が上から来ま

す。けれども部下の兵隊たちはぜんぜん働かないのです。・・・目の前に死が迫っているのに、そんな意味

のない作業などやりたくないのは当然で、それがごく普通の人間の気持ちというものです。しかし、軍隊

では上からの命令は絶対です。やらないわけにはいかない。それで、島尾さんはどうしたかというと、部

下を非難したり強制したりすることなく、自分一人でその作業をやることにするんです。・・・彼にはわか

っているんですね。人を動かすのは自由な意思の力だけであって、それ以外の名目で人を従わせるのは愚

かなことだということが。・・・」。

 上記の話を私がしました(本文は本からの引用)。続いて一人の方の発言がありました。昼の聖研でボ

ンフェッファーのことが話された。ヒットラーの暗殺を目論む秘密結社に加わったと言われるボンフェッ

ファーは、人間としての限界を超える罪を知りながら、敢えてその罪を犯す決断をすることによって、そ

の時代と社会の中で責任をとろうとした。今この時にやらなければならないことをする。後の人々に繋げ

ていくためにも。辺野古のおじい、おばあのことが浮かぶ。単なる自分たちの海をつぶさないためにとい

うだけでなく、かつて戦争で沢山の人が亡くなったこと、ベトナム戦争イラク攻撃も沖縄という自分た

ちの生活の場から飛び立っていく。必死に止めようと座り込みが続いている。過去への責任とこれからの

人たちのために闘っている。このことは沖縄だけのことではない。世界のイラクでの戦いに繋がってい

る。私自身以前は沖縄の苦しみ痛みを見過ごしていたが、たまたま出会いを与えられて、国会前の座り込

みを続けている。国会前の座り込みでは、70歳のYさんと80歳のSさんの二人の年配の女性に出会った。お

二人ともご両親がクリスチャンで、幼い時から戦争批判を聞いて育った。Sさんは体力が落ち入院してい

たが、最近また座り込みに来ている。過去から学び将来に繋げていく運動を担うSさんの迫力はすごい。

私たちの世代にいろいろなものを伝えてくれる。何を感じ、何を将来に向けて伝えられるのか、聖書研究

から考えさせられていた。今導かれている自分を感じるので、そこから逃げないで歩んでいきたいと思っ

ている。