今日も「父北村雨垂とその作品(101)」を掲載します。今回掲載の句の中にも既に掲載しているものも含まれているように思いますが、お許しください。
父北村雨垂とその作品(101)
月の秘蜜 おのが秘蜜を 知らずして
人も馬も馬場も 埃に 見え 隠れ
炎えろ 青緑(みどり) 声援の波 小刻(こきざ)みに
咄々と語る 心臓と コドバの 静寂(しじま)に
瞭らかな存在を ひととき 孤獨のとき
たそがれの文化の 馬鹿な 馬鹿な 馬鹿な
心臓の 多辯なる 孤獨と、対象と
風と おくれ髪 風は 男の立場にて
嵐の跡の ひろひろ と ひと葉
科学者に 悪霊醒めず 潮は 満つ
巴に躍る 父のいのちと 子のいのち
月のない夜は 死んだ子が ゐると想う
闘病記 蝿の臓器を 画描き 絶ゆ
土 掘れば 土は いのちの色かとも
まっくらな魂 三味線を 覚え
鬼(おに)の面だけが さすがに 生き生き し
創造の圧巻に タバコが 在る
猫柳 汝を 西行法師をす
赤ん坊に 言葉 なけれど 春が萌(も)え
絵の具なき 絵の具皿あり 赤ん坊よ
火を吐くか 秋を恨(うら)むか 無花果は
花ほどに 蝶ほどに 佳き春ならず
剃刀の下に まどろむ 昼が ある
素晴しい月夜である 洗濯 してゐる
非曲 その子守唄から 夢となる
時計 鳴る 擬装の母と 子の上に
重水素/重水素/重水素//阿片
風船は天に 人生まれ 人は 死に
父よりも 歴史 鋭きが 愉(たの)し
解けぬいのち ときに伽藍も 創りける
或る明日を 画描き いのちが 薯を掘る
舗装成って この坂の菫 成佛す
花曇り おまえ 決意を何故 捨てた
男と女が 袋小路を 歩るく
蕗のとう あまえ 嫡子が 庶子なのか