なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(2)

父北村雨垂とその作品(2)
      父の川柳の弟子か、関係者で片山哲郎という方がいます。この方が1973年に父の句を選んで手作りの作品集を作ってくれました。限定5部で原稿用紙に手書きしたものをコピーされて手作りの製本をしたものです。私の手元にその一冊があります。表紙は茶色の和紙に「北村雨垂作品集」と書かれた長方形の白い和紙がはってあります。この作品集の~はじめに~に父の「ペンギン」という詩が載っています。それを紹介しましょう。
 
      ペンギン
 
天井が咽喉を鳴らし
鎧戸が呑まれる
朝が
私のかほに叩きつけられる
― 夢だった道化師汗を握ってた
ぜんそく病みの柱時計が
ゴホン ゴホンと八つ
欠乏で
腹をふくらしたペンギンが
三、三、五、五、
太陽を拒んだ職場へ
吸いこまれる
― 千仞の谷へ石くれおどるのだ
みよ
からまわりする思想で
跳ねかえされる権利と
相手から逆算した
明日の存在のために
みずからの骨肉をけずる
彼ら労働者
だが
君らはそれでいいのだ
― 時間、空間、貨幣 ( きん )の王冠
 
天井の腹は静かに
鎧戸がねむる
昼が
私へ灰色にふくらむ
― くるくる真昼目玉のうえの道化師だ
時計の針の親子が
正午の下で抱擁する
背徳で
腹をふくらしたペンギンが
一、一、二、二、
太陽の遊ぶソフアへ
はずませる
― 笑ってる鬼の面だよ石くれだ
みよ
絶壁を楯とする思想で
相手から強奪した
明日の存在のために
みずからの骨肉がふくらむ
彼ら資本家
だが
君らはそれでいいのだ
― 主観、客観、貨幣 ( きん )の王冠
 
天井が咽喉を鳴らし
鎧戸が吐かれる
夜が
私のうちとそとを浸す
― 道化師を消す黒幕が降りたのだ
柱時計の心臓が
コツコツ無限に
虚無で
腹をふくらしたペンギンが
一、三、一、五、
太陽を埋めた街路に
ゆられる
― 水に浮くそれを石くれ夢にみた
みよ
喪失のなかの思想で
ちっそくした権利と
相手から忘却した
明日の存在のため
みずからの骨肉を啖う
彼ら浮浪者に
だが
君らはそれでいいのだ
― 羅漢、圓環、貨幣 ( きん )の王冠
 
                    1949(昭和24)年9
 
・ 父は多分この頃共産党員との付き合いがあり、自分も入党しようと考えたことがあったようですが、家族に迷惑がかかるのではないかということで、思い留まったようです。晩年牧師をしている私に、「俺も洗礼をうけないと、お前が困るんではないのか」と、真剣に言ったことがあります。私は、「そんなの関係ないから、心配しないで」と、即座に答えたのを思い出します。そういう父親でした。