なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

黙想と祈りの夕べ通信(11)

 昨日は、神奈川教区社会委員会主催の「平和集会」が紅葉坂教会で行われました。講師は、「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」代表の中手聖一さんでした。「子どもたちを放射能から守る!~大人たちの責任」という題で、3月11日以降の福島の現実の深刻さを坦々と、しかし子どもたちの命を守らなければならないという熱い思いをもって語ってくれました。語っているときに、中手さんの目にしばしば涙がにじみ出ているのではないかと思えるほどでした。中手さんは、自主的な避難は限界で、「避難や疎開を政策として実現できるかどうか、それが福島の子どもたちの犠牲者を左右する正念場です」と、「福島の人びとと共に日本中の人びとに訴え、政府交渉を続け、献身的な闘いを続けています」。以前にある集会で聞いた、「子どもの命を守らないで、国は何を守るのですか?」と訴えられた5人の子どものいらっしゃる母親の叫びと共に、中手さんからの重い問いかけにどう応えていけるか、自らの課題として考え実践していかなければならないとの思いをもって、平和集会を後にしました。
 さて、今日は「黙想と祈りの夕べ通信」(11)(復刻版?)を掲載します。
 
  黙想と祈りの夕べ
   (通信№ 11 1999・12・12発行)
 
 12月に入り、アドベント第二主日礼拝が5日(日)に行なわれました。その日は月の第一日曜日でしたので、「こどもと大人の合同礼拝」でもありました。今年から聖歌隊にお願いして、アドベントやレントの「合同礼拝」で聖歌隊の奉仕を加えてもらうことにしました。ロ-ソクが二本灯り、もうすぐクリスマスです。先月の「学びと語らいの集い」の講師としていらしていただいたK先生のお考えでは、礼拝式をちょこちょこ変えるのはよくないということでした。けれども、「こどもと大人の合同礼拝」では、そのいけないことをしています。もちろん、目先を変えて奇をてらうということではなく、しばらくは「合同礼拝」での実験を繰り返し、一年のサイクルで定着させていきたいと考えているからです。5日のアドベントの「合同礼拝」では、クランツへの点燭の他に、聖書朗読を群読にしてみました。旧約を礼拝会衆の男性(男の子)、新約を女性(女の子)に群読してもらうことにしました。そのように礼拝式順序のパンフレットにも入れていただきました。すべてが出来上がってから、はて会衆を男と女に分けることが適切だったのかと迷い始めました。なぜなら、その人の性的指向性は必ずしも肉体的な性によらないからです。肉体的な性では男であっても、自分は女であるという人もいるでしょう。またその逆の人もいるでしょう。そうすると、単純に男女に礼拝会衆を分けると、そのような傾向の人を傷つけることになるかも知れないと思えてきたのです。仕方なく、当日は聖書朗読のとき、最初に私が司会者に代わって、旧約聖書を「自分は男性(男の子)と思う人は一緒に朗読してください」と言ってから、群読することにしました。そして、礼拝でもその通りにさせてもらいました。北村は、おかしなことを言うと思われた方もあったかも知れません。
 私は、多少フェミニズム運動に関心を持ち、その関係の本も少し読んでいますが、もう大分前に1970年代半ば頃から自らレスビアンを公表しているアドリエンヌ・リッチというアメリカの詩人の邦訳された三冊の女性論を読みました。内容は忘れてしまいましたが、この人の表現されたことばには驚かされたした。翻訳ですから、原文はもっと微妙な表現なのでしょうが、伝えられた単語を使いながら、その単語を重ねて作られた文章表現は全く新しいという印象を強く受けました。そのことは、彼女の表現したいことが、彼女の固有のもので、他に替わり得ないということだと思います。このリッチによって、私は、ひとりの固有な存在を、共通語という言葉の暴力で封じることの恐ろしさを教えられたように思いました。ですから、「男」「女」という共通語で傷つき、抑圧される人がいるとしたら、それは言葉の暴力、言葉の殺人に値すると思うのです。このように考えて生活して行くことは、無自覚的抑圧者である私たちには生きにくいことかも知れません。けれども、私たちの生きにくさが、現実社会で生きにくい生活を強いられていた抑圧・差別されている人たちの生きやすさにつながるとすれば、その生きにくさを引き受けていかなければなりません。そして、いつか人を傷つける生きやすさは、人間としての生きにくさであるという感性を私たちがもてるようになればと願います。
 5日の「黙想と祈りの夕べ」の「分かち合い」では、洗礼志願者としばらく教会から遠ざかっている方々、そしてこの世の中で心の病気やハンディを負う者をもつ家族の苦しみについての報告があり、共に祈りました。