なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

船越通信(141)

           船越通信癸隠苅院 。横娃隠看1月5日               

・あけましておめでとうございます。最近はこの年初めの挨拶の言葉が、社会状況との関連からす

れば、そぐわないように感じられます。1月1日の私のブログでは、「あけまして・・・・ござい

ます。今年もよろしく。」としました。けれども、時代状況・社会状況とは別に、新しい年も命を

与えられて生かされて生きることが許されている無償の恵みへの感謝は失ってはならないと思いま

す。そこで、この「船越通信」では、「あけましておめでとうございます。」と挨拶させていただ

きました。今年もどうぞよろしくお願い致します。

・さて昨年末の日曜日、12月29日の礼拝は10名の出席者があり、礼拝後何時ものようにお茶

をいただきながら、懇談して散会しました。その懇談の中で、K・Tさんが、クリスマスの時期

に、かつて日本に来て働いていたタイの少数民族の女性とその子供たち(日本人男性との間に生ま

れた日本国籍を持つ子どもたち)の支援活動の一環としてタイに行って来て、そこで体験してきた

ことを話してくれました。近代都市バンコックと比べて、山岳地帯の少数民族の方々の暮らしの貧

しさ、かつて日本の性産業で働かされた女性の子どもが、同じようにその対象になっている現実な

ど、やり場のない怒りの気持を抑えながら話してくれました。幼い子どもたちの体が、臓器移植の

ために売られたり、性の奴隷のような扱いを受けているということは、もう大分前になりますが、

2002年出版の梁石日の小説『闇の子供たち』を読んだ時に、衝撃を受けると共に、現実のことでは

ないかと思わされました。そして、確か何かの機会に、この本を読んで自分は「人間をやめたくな

った」ということを言ったり、書いたりしたことがあります。このような非人間的なことがお金の

力で行われているということは、歯止めの利かない人間の欲望と絶対的な貧困のなせる業に違いあ

りません。

発展途上国第三世界)の貧困からの脱却は、その国によって異なるでしょうが、全ての国が経

済発展して絶対的な貧困からの脱却が可能かと言えば、不可能ではないかと思います。南北格差の

是正は、基本的には前にもこの船越通信でも書きましたが、吉本隆明が言うところの贈与経済によ

る以外にないと思われます。先進国の富を発展途上国を含めて公平に分配するシステムの構築で

す。先進国の富みの多くは、資源と労働において発展途上国に依存しているわけですから、先進国

はその富の一部を発展途上国に贈与するということが、ある意味では当然のことではないかと思い

ます。今はどうなっているか分かりませんが、しばらく前の日本のODAのようなひも付きではな

く贈与です。ただこのことの実現には、もう一つ不可欠なことがあります。それは先進国を含め発

展途上国すべての国の政治の民主化です。贈与をする国もされる国も平和と人権を大切にする民主

的な政治が行われなければ、贈与が本当に生かされるようにはならないからです。そういう意味で

は、沖縄や福島の人たちを、そして寿地区住民や日雇い労働者・野宿者を犠牲にして行われている

日本の政治や経済の動きは、発展途上国の絶対的な貧困を是正する方向とは逆方向ではないかと思

われます。このような厳しい状況の中で、イエスによって全ての人が神の前に対等同等な者として

互いに愛し合う神の支配する神の国を信じ、「み国を来たらせ給え」と神の国のこの地上における

実現を祈り求めながら生きている私たちは、その希望の使者としてどのように生きられるか。その

問いを抱えながら、今年も教会とそれぞれの歩みを積み重ねていきたいと願います。

・みなさんは年末年始をゆっくりお過ごしになれたでしょうか。私は、12月31日と1月3日に寿の越

冬に参加しました。両日とも9時半頃から午後までです。夜のパトロールまでは参加できませんで

した。31日は、朝野菜の切り込みをして、午後3時からの年越しそばの配食に参加しました。130

0食のソバの配食です。通常の炊き出しは雑炊で、配食は既に出来上がった雑炊を器に入れて配り

ますので、600食でも一時間弱で配食が終ります。ところが、ソバはゆでてありますが、一度熱湯

に入れて温めなければなりません。一回10人分ずつ温めますので、出来上がったものを10人ず

つ配食の場所に行ってもらい配ります。その都度並んでいる列の初めから10人を区切って、配食の

場所に行ってもらいます。午後3時から始まった配食が午後5時になっても終わりません。この日

はボランティアの方々が比較的揃っていましたので、私は午後5時ごろ失礼して、鶴巻に帰りまし

た。3日は、朝の野菜の切り込みが終って、配食が午後4時からということでしたので、午後2時

頃まで生活館3階の囲碁・将棋大会に参加しました。最初地域の方と将棋を指しました。その後お

隣の囲碁を観戦させてもらいました。二人が打っていた時に、お互いに相手が石を置けばすぐ石を

打つ、早打ちでしたので、一局打つのに30分もかからない位でした。二人が打つのを終えたので、

その後私はその一人の方と3局囲碁を楽しませてもらいました。お聞きするとその方は4段か5段と

いうことでした。私は遠慮して自分は3級位ではと言って、その方と4目置いて打ちました。3回

とも15目前後の負けでした。打ち終わって、その方から、講評を受け、1級から初段くらいの力

はあると言われました。この日はそれで失礼してセンター南の近くに住んでいます私の姉の家族の

ところに新年の挨拶に行ってから船越教会に来ました。

・今回寿の越冬では久しぶりの方とお会いしました。その方は大学で社会学を教えている人で、テ

ーマは寿のような「都市下層地域」の研究です。この人が学生時代、研究のために寿に来ていて、

一度寿地区センターの青年セミでその発表をしてもらった時があります。その時彼女の発表を聞い

て、私は青年ゼミのスタッフとしてそのゼミに参加していたのですが、彼女の立ち位置について相

当厳しく批判的な発言をしたことがありました。彼女はその私の発言をどう受けとめたのかは分か

りませんが、大学を卒業して地方の大学に就職し、その後東京の大学に戻って研究を続けているよ

うです。地方の大学時代にも休みの時には寿に来ていましたし、東京に戻ってからも時には学生を

連れて寿に来ているようで、たまに寿で出会う事がありました。今回の越冬で出会った時に、彼女

から彼女の書いた論文をいただきました。「現代日本の都市下層地域における福祉ニーズの増大と

地域課題の再編~横浜・寿町地区の事例から~」です。