なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(7)

父北村雨垂その作品(7)
 
今回は「酒とたばこ」「蛇」「三月」「顔」三部作を紹介します。
 
「酒とたばこ」
 
酒とたばこ 誰も英雄を信じてゐる
酒とたばこ 口紅だの 白粉だの
酒とたばこ 疾(疲?)れたんだと哄笑した
酒とたばこ 軽音楽の嫌いな私
酒とたばこ 一杯の水が欲しかったか
酒とたばこ 辻占いの娘の えくぼ
酒とたばこ 火葬場の 匂いがした
酒とたばこ やがて夜が 終らうとする
 
「蛇」
 
蛇が曲線だ 生命を證徴した
蛇が 人間を偽善家と 断定した
蛇が 盗賊の正しい在り方を 主張した
蛇が 大きな存在と 小さな存在を 解脱した
蛇がまっすぐだ 天命を意識した
 
「三月」
 
雨が 途方に暮れてゐた 三月
芽がそれぞれに 尖てゐた 三月
おんぼろの 衣装が 三月を ひきたてた
早春 還れ 私に妻も子も要らぬ
三月の小川に 處女の体臭が
 
「顔」       三部作
 
井戸の蒼空で 顔が 系譜を獨語した
俺を見たいと 顔が 心臓に獨語した
俺がゐないと 顔が 鏡に獨語した
おお兄弟と 顔が 小砂利に獨語した
感情の狡智と 顔が 落蝉に獨語した
 
髭をぽっちり 盆栽とくらべる 顔だ
白粉を創った 智惠のある 顔だ
怒鳴られた馬が 風格のある 顔だ
小便垂れてゐる 天国へ往く顔だ
意味を握んで 生きようとする 顔だ
 
私の顔に ふるさとの 風よ 吹け
私の顔に くんくんと 雲よ 湧け
私の顔に しみじみと 露を おけ
私の顔に はらはらと みぞれ せよ
私の顔に 咄々と 神よ 説け