なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(39)

 今日も父の作品を掲載します。昭和14(1939)年という時代とを想像し、父の作品を読んでいると、いろいろな想いが涌いてきます。
 
父北村雨垂とその作品(39)
 
   ~昭和十四年・・・・・それは私の生涯に於るもっとも美しい年であった~
 
= 小 説 =  昭和十五(1940)年一月発表
 
菜の花に斯る處女を創造す
純情か無智かやころころと球は
女は語る稚く吾れ甘へたり
現実が生む不自然な芽を愛す
情熱の無言を聴けりエーテル
こころそも何なき母を汝に乞う
男の言葉女の言葉火を宿す
反省を越へた世界で雄雌二個
酒とろり常識の泡沫既になし
莫迦な事と恋ありわれは偽るや
純情の恐怖か逢うごとに傷き
鉄壁の無限が中間に甲とて
一切は会えた事実がほほえむよ
情熱に美しき日と醜き日
愛すれど觸れまじとなり瞼閉づ
人倫言へば肩をたたけば女泣く
絶対の世界が描いている涙
唇に母乳の香りをいまも置け
明日会へる別れに何の淋しさか
夢消へるさうして夜は消へゆく
女笑うひとときのこと地も笑ふ
陽よ射るな慰え男女は泣いてゐる
石くれに恋の苦悶を聴かせよう
エルテルに泣き明かしたり君わらう
はぐくめる愛君と裁るこころ枯る
石くれの如くすべてを失うか
ものすべてふたつ並ぶに吾がこころ
追憶を入れる容器は円錐か
会う日去り憂愁ひとり現在を追う
まぼろしの女は去りがたき風情
点の如く線の如きか夢の性
脳漿沸り男とて笑ひけり
死と對す向うの丘に子等遊ぶ
在った日は地に夢いまも新しい
ひと敗る一片の葉と恋は地に
反省の奥に自然が動かない
かへり来ぬ女へ郷愁か愛は
ひとり居るわ苦き夜なり起ちあがる