なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(61)

 今日は「父北村雨垂とその作品(61)」を掲載します。


             父北村雨垂とその作品(61)

 雀二羽 父を葬る日の庭に
 
 土と語る いのちは悲しきものにあらず

 明日を知らぬ 命(いのち)と想わねど 別離
 
 蛇を噛みきる 血みどろの蕊

 来(こ)し方(かた)の その深淵に 掌をかざす

 杜の鴉は 議事堂を 見て来たか
 
 月に 厚味があった 薄雲

 假死の地上に 月光が 降りそそぐ

 月と海 月と明けやすき夜を語る


 おとめ  五句

 胸の奥 深く 想いが 時を待ち

 女 ためらって 十九の青春(はる)は逝く

 うちあける 言葉が重い 恋ごころ

 処女が ほほえんだ 眞新し 箪笥(たんす)

 現実へ なまなましくも 夢の跡


 夏は去る 土は 孤獨の声 放つ (S22/11路癸韻鉾表)

 カンナ赤し 狂女の口唇(くちびる)も 赤し

 秋の蚊や ころしたあとの たのしめず

 二十日月 這虫の吾を 憫(あわれ)れむか

 もの日わぬ秋に 女は 旅せんとす


 狂人  路15発表

 明日の秩序へ 狂人が 駆けだした

 実に静かに 狂人がみている ぼんおどり

 陽が踊る 狂人も踊る 蜘蛛の巣だ

 狂人は 平凡に還(かえ)る 悲劇に帰る

 狂人の胸の 墓石は 父であらうか

 狂人が 歴史に断層(そう)を 描いた
 
 狂人に 新聞もラジオも激賞(げきしょう)した


 赤とんぼ

 赤とんぼ 道は直線であるとは云えず

 赤とんぼ 毒けしうりの娘が二人

 赤とんぼ 白壁の家の子は 白痴

 赤とんぼ 思想とは 馬鹿気たものさ

 赤とんぼ 塗り絵の母と児の窓に

 
 妻を亡える 俗名ユキ 旧姓 生沼

 天命の迫るに 明日を待つ姿

 土の冷たさに 還れり 北秋

 骨壷に 在りし昔の夢を抱く

 妻よ 唯ひとりで 墓場に 淋しかろ

 あら波に 逆う 父と 二人の娘