なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(99)

 今日も「父北村雨垂とその作品(99)」を掲載します。以下の句の中にも既に掲載しているものが含まれているようですがご容赦ください。この中の句では、「どん底に影 友達ずらり 背を向けて」が心に響きました。

               父北村雨垂とその作品(99)

 黄金は名工だ 美男 美女

 どん底に影 友達ずらり 背を向けて

 楽譜は 婦(おんな)の脚である 終列車

 鈴のある 猫の横死を 飄々 野犬

 父の涙は 白い 子の涙は 赤い 或る日

 のしかかる絶壁と 引込まうとする 断崖

 夏は 去る 土は 孤獨の声 放つ

 カンナ 赤し 狂女の 口唇(くちびる)も 赤し

 二十日月 這虫の吾を 憫(あわれ)むや

 秋の蚊を 殺した後も 愉(たのし)めず

 この父を 正しと思え 夜の膳

 泣くな この父の白髪を 見せて やる

 思い起す 夢より淡き 命(いのち)の 在家(ざいか)

 児の骨を詫す こほろぎ 繁き 土

 油一滴 水に拡がり 実在を強いぬ 

 死んだ児が 笑ってゐる 落ちてゐる萩

 番犬と 知性が叫ぶ 黙るほかなし

 ひとりの足音が 近づいて 遠のいて夜明け

 影 ひとつ 護りつづけた 泣き 笑ひ

 中年の 婦(おんな)二人の わりきれぬ 対話