なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(105)

 今日も「父北村雨垂とその作品(105)」を掲載します。

                 北村雨垂とその作品(105)

     対流 癸后“表

 朝陽 夕陽 地獄の 猊の 右 左

 風におどる 月は無限と 雲と駆る

 閑として 能面に 秋の 光と影

 能面や 日本海の 月に 雪に
 
 碑(いしぶみ)に らくがきしたる 蝸牛

 河(かじ)蛙(か) は従に 稚(ち)鮎(あゆ)は横に せせらぎや

 蜥(とかげ)が ちらり 亀も 能面を ちらり

 禿鷹の糞は ニーチェが 荘閣か

 天命に 三日 おくれて 爪が 死ぬ

 鏡台の鬼と 昔を 振り返る

 園長の鯛に はためく万国旗

 紫の石 朝の小石

 朝の小石 紫の意志 秋の妻子

 紫陽花の朝は 涙を 風が拭(ふ)く

 地獄を駆ける吾が能面を 鏡にて

 難破船は 陽を浴び 孤児は蟹と遊び
 


     森林 癸押“表

 青年の理智 見当らぬ 種牛の猊

 女の歴史は 老廃物かも 知れぬ

 てんぐ茸 紅てんぐ茸 夜咲く街

 辯證の鐘を聴け 猫柳は 聾(つんぼ)

 原色の夢 女の夢 白は 矛盾

 泣いた 怯者が 洪笑した 暗轉

 愛人を 殺すと 曰うか 純水は 呑まぬ

 理智 無智 狡智 植民地の情痴

 正午(ヒル)は 過ぎた 街は発情した 土曜日

 食道に散らばっている顔だ 哲学無用



     大東亜戦争の中で(川研に発表したもの)

 音もなく 萩が光て 動く 夜

 食うことの 話のあげく 笑ひけり

 魂キララ 陽を跳ねかえし 学徒 征く

 病児 抱(か)かえ ねむれぬままの 世を移り

 轉業の群 見送りて 崇き 朝

 雑炊の 小松菜 明かし 春 正し

 夏 逝きて 土に 静寂の聲 さわがし

 夏は去る 土は 孤獨な 聲 放つ

 刻明に 意識を消してしまった 夜明け