なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

控訴審判決文(その1)

 7月10日の控訴審判決全文を3回に分けて掲載します。一審判決文は2013年(本年)2月28日のこのブログに、やはり3回に分けて掲載してあります。
 いずれ今回の審理のやり取りで教団側から出された文書の内容について、批判的な検討を加えたいと思っております。特に教会担任教師の生活権について教団は何も責任を取らないということが明らかになりました。各教区が互助制度によって収入の少ない教会の担任教師への支援を精一杯考え、実施していると思われますが、教団は教会担任教師の生活権の保障は各教会との準委任契約によるものであるから、教団とは関係ないと主張しているのです。教団が(正)教師を立てるというのは、宗教上の地位を付与していることであって、(正)教師の生活については、招聘を受けた教会との間の責任ですから、というわけです。
 私は、教団が本来やるべき事の大切な一つ課題として、諸教会・伝道所に遣わされた教師の生活の保障を公平にしていくことにあると思っています。福音理解を一つに統制するために信仰告白・教憲教規を振りかざすことではなく、むしろそのような教義・信仰の問題では多様性を認めて、創造性を持った対話による一致を求める作業の中で刺激い合い、そこから生まれる豊かさを、立場考え方が違ってもみんなが享受するようにしていけばよいことです。教団がやらなければならないことは、むしろ教区間の経済上の格差、招聘された教会の経済事情によって格差のある教会担任教師の収入の公平性を確保する手立ての方が先だと思っています。
 現在の教団執行部に連なる信徒教職は、その点が逆転していて、教区間格差の是正としてあった教区連帯資金をつぶして、伝道資金とし、自分たちに都合のよい教会や信徒をつくろうとしているとしか思えません。本当に伝道を大切にするなら、各教区、各教会・伝道所の主体性に任せ、それを支援していくべきです。
 裁判は、最高裁の場に移して継続していきますが、この裁判からの付随的な獲得目標は、この裁判で明らかになった現教団執行部の考え方が、果たして現執行部を支援している教会・伝道所の信徒・教職から支持されるもかどうかを含めて、今後の教団内における私の戒規免職処分撤回に向けて問題提起していきたいと思っております。
 ということで、皆さんも、それぞれの場でこの判決文の問題性を伝えていただければ幸いです。                

控 訴 審 判 決 文

 主    文

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

 事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 本件を東京地方裁判所に差し戻す。

第2 事実の概要(略語は新たに定義しない限り原判決の例による。以下本判決において同じ。)
 1 本件は、控訴人が、宗教法人である被控訴人に対し、被控訴人による、平成22年1月26日に行われた、控訴人の正教師の地位の免職処分(本件免職処分)が無効であると主張して、(1)控訴人が被控訴人の正教師としての地位を有することの確認を求め、(2)本件免職処分に引き続いて同年9月30付けで行われた教師退職年金給付減額決定(本件年金減額決定)が無効であることの確認を求めるとともに、(3)本件免職処分が不法行為を構成すると主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料1000万円及びこれに対する本件免職処分の日である平成22年1月26日から支払済みまで、民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 2 原審は、控訴人の本件訴えをいずれも却下した。
 当裁判所も、原審と同じく、控訴人の本件訴えは、いずれも却下すべきものと判断した。
 3 前提事実及び争点(当事者の主張を含む。)は、次のとおり改め、当審における当事者の主張を後記4のとおり加えるほかは、原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」1及び2(原判決2頁12行目~9頁15行目。別紙(ただし、以下(1)のとおり改める。)を含む。)に記載のとおりであるからこれを引用する。
(1) 別紙の「第2 教規」の「128条」の「 廚法(2)ないし(5) 略」とあるのを
「(2) 略
 (3) 神学教師 教団立神学校および教団認可神学校に在職するものであって、当該神学校の教授会構成員である者
 (4)教務教師 次の(イ)または(ロ)の何れかに該当する者
(イ) 教団事務局、教区事務所、教団関係学校または関係団体に在職する者
 (ロ) 特に教団から派遣または推薦により前記以外の場所に在職する者
 (5) 略」と改める。
 (2)原判決6頁15行目の「本件戒規申立」を「本件戒規申立て」と改める。
 (3)原判決7頁5行目の「教授」を「享受」と改める。
 (4)原判決8頁15行目の「本件戒規申立」を「本件戒規申立て」と改める。
 (5)原判決8頁16行目及び18行目~19行目の「先行戒規申立」をいずれも「先行戒規申立て」と改める。
 (6)原判決9頁10行目の「教団新法」を「教団新報」と改める。
 4 当審における当事者の主張
(1) 控訴人の主張
ア 正教師の地位確認請求の適法性について
(ア)被控訴人は、教師の謝儀の基準額を定めるなど、教師の謝儀の支払に主体的か
つ密接に関与している。また、控訴人は、被控訴人との関係で正教師であることが認められているからこそ、被控訴人が教規で定める謝儀を教会から受給することができ、正教師であることを否定されれば、その受給資格を失うことになる。したがって、謝儀の直接の請求相手が形式的には教会であったとしても、教師に対する謝儀の支払は、被控訴人の示す支払い根拠と基準に基づいて被控訴人の被包括宗教団体である教会を通じてなされているといっても過言ではない。そうすると、謝儀受給権の前提となる正教師の地位は、被控訴人との関係において、法律上の地位であるというべきである。
 被控訴人は、謝儀は控訴人と紅葉坂教会との間の一種の準委任契約関係に基づいて支払われるものであり、被控訴人はこれに何ら関与しないなどと主張するが、ゞ飢颪蓮被控訴人の教憲・教規に則り制定された規則(被控訴人の承認を要する教会規則)につき、法令と同様の遵守義務が課せられており、教会は被控訴人の強い統制下にあること、教師としての地位は、被控訴人により付与されるものであること、6飢饕看ざ技佞箸靴洞飢颪ら招へいを受けるためには、被控訴人の機関である教区総会議長への申請・承認を要するものであり、教会担任教師が辞任しようとするときや教会が教会担任教師を解任する必要が生じたときにも、教区総会議長の承認を要するなど、正教師の重要な人事権はことごとく被控訴人が掌握していること、と鏐義平佑蓮∋渦爾糧鑛餝臻/佑紡个掘△修譴召譴僚ゞ桔/裕則に、代表役員を主任担任教師の任にある者をもってこれに充てるとの条項を入れることを求めており、この条項を定めなければ被控訴人と包括関係を結ぶことができないところ、教師の地位は、被控訴人から統制を受ける被包括法人である教会の代表役員という法的地地位と切り離せない一体の関係に置かれていること、イつての被控訴人の規則には、4種の懲戒が規定され、その中に、「免職 教会主幹者其の他の職を免ず」との規定があり、この規定は、現在の戒規施行細則の元となっているのであるから、現在の被控訴人の免職という処分が、教会における教会担任教師等の職務を直接的に解く効果を意図していたことが明らかであることからすると、教会と被控訴人との形式的な法主体の違いを理由として、謝儀受給権が、正教師としての地位が法律上の地位であることの根拠とならないと解することは、不当である。 
(イ) 被控訴人の機関である教区が通知している各年度の教師謝儀基準表には、「この基
準額は、牧師館家賃、水道光熱費、電話代などは教会が負担しているものとして作られています。自己負担となっている場合には、これらの経費を加算してください。」と明記されており、正教師が所属する教会の牧師館等に居住し賃料相当額の保障を受ける権利について、被控訴人は主体的かつ密接に関与しているといえる。そうすると、正教師の所属する教会の牧師館等に居住し賃料相当額の保障を受ける権利を有することも、正教師の地位が法律上の地位であることを基礎付ける一要素と評価されるべきである。
                              (続く)