なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(84)

 今日は「父北村雨垂とその作品(84)」を掲載します。

               父北村雨垂とその作品(84)

    川研 329 1977年(昭和52年)5月

 雷雲や 菩薩 氷河を 歩るく 歩るく
 
 花 散るや 婦の肌の 愛しさに

 千眼の蜻蛉(トンボ) 不覚や 蜘蛛の巣に

 嬉びも 悲しびも 掌に いしくれを

 神の指紋に ツァラトストラは 十字架を
   

    川研 330 1977年(昭和52年)6月

 神と 砂漠を 歩かねばならぬ 血よ

 善悪の 右と左の 岸を 火蛾

 中流は 而(しか)り と 否 に 石も 流れ

 水平の峠で みたか 昼の月

 没落の衣裳を 鴉 あけぼのに

 
    川研 331 1977年(昭和52年)7月

 さりげなく 時計と語る 娼婦の 垢(あか)

 音 音 神を カオスの 私生児に

 心臓が 昨日(きのう)と今日を 吹き分ける

 しろぎぬ と あらき に確(しか)と 幻想(まぼろし) を

 十字架も 数珠の化石も 砂漠の毬藻(まりも)

 白い時間 黒いカオスの はかなき 虹

 謳(うた)え カトレヤ 私の現在(いま)は 地獄の季節

 
    川研 281 1973年(昭和48年)9月

 死んだ児の 顔と掌におく 蕗の薹(とう)

 夢 淡く 墜ちた椿の 風に停つ

 老僧の背に 梵鐘の「トヘホには」

 ピヨピヨと 駆けた 鶏卵(わたし)の 体臭よ

 キリストに 釋迦にも 獏の不適な 笑ひ

 狂気の 衣裳の 永幻よラララ大地よラララ

 反骨の 日記は白い 八(や)ツ手(つで)の花

   
    人誌 10 1975年(昭和50年)7月

 無花果の葉は 瞭(あき)らか 智惠の人を

 桑の実や モーパッサンを ふところに

 天の河 思念(ねん)の風は 墓石に

 百合(ユリ) 匂ふ 鎌倉山に 昼の天

 父の血が 母の血が 噴(ふ)く 彼岸花

 浜木綿(ハマユウ)に ホステスに 儚(はかな)しと 今宵(こよい)

 風と語る 柳は 孤獨を 疾むらし

 絶望の蝶は 峠で 貝となる

 獅子と鷲(ワシ)が ドッキングした 悲喜劇