なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

自分を愛する心

               「自分を愛する心」  

神学校を出て最初に赴任した教会の一人の青年から、「隣人愛」について話していた時に、「自分を

愛することができない人が、なぜ隣人を愛することができるのか」という鋭い問いかけを、私は受け

ました。まだ牧師になり立ての未熟だった私には、この青年の問いに、きちっと答えられず、佇んだ

という体験があります。それからだいぶ経ってから、この吉野弘の詩に出会いました。この詩の特に

「ひとが/ひとでなくなるのは/自分を愛することをやめるときだ。//自分を愛することをやめる

とき/ひとは/他人を愛することをやめ/世界を見失ってしまう。//自分があるとき/他人があり

/世界がある。」というフレーズが私の心に響きました。


       奈々子に  作 吉野 弘


赤い林檎の頬をして

眠っている 奈々子。


お前のお母さんの頬の赤さは

そっくり

奈々子の頬にいってしまって

ひところのお母さんの

つややかな頬は少し青ざめた

お父さんにも ちょっと

酸っぱい思いがふえた。


唐突だが

奈々子

お父さんは お前に

多くを期待しないだろう。

ひとが

ほかからの期待に応えようとして

どんなに

自分を駄目にしてしますか

お父さんは はっきり

知ってしまったから。


お父さんが

お前にあげたいものは

健康と

自分を愛する心だ。


ひとが

ひとでなくなるのは

自分を愛することをやめるときだ。


自分を愛することをやめるとき

ひとは

他人を愛することをやめ

世界を見失ってしまう。


自分があるとき

他人があり

世界がある。


お父さんにも

お母さんにも

酸っぱい苦労がふえた


苦労は

今は

お前にあげられない。


お前にあげたいものは。

香りのよい健康と

かちとるにむづかしく

はぐくむにむずかしい

自分を愛する心だ。