なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

船越通信(500)

船越通信、№500 2022年1月23日(日) 北村慈郎

    16日(日)は会堂での礼拝は中止にし、メール配信による自宅分散礼拝にしました。23日(日)以降もしばらく続くようになると思われます。16日(日)以降も新型コロナウイルス感染の急拡大が続いています。感染者数は5波の時の最高を18日(火)には越えて、19日(水)には全国で4万人も越えています。

   

   18日(火)午後3時ごろ私は人生ではじめてMRI検査をしました。大分前から秦野日赤病院泌尿器科で薬を処方してもらいながら前立腺の経過観察を続けていますが、昨年11月末の定期診察の時に、マーカーの数値が大分高いので、MRI検査をしてその結果を見てから組織検査のための入院を考えましょうということで、今回MRI検査をしたという次第です。帰天した連れ合いの千賀が療養中に診てもらっていた東海大学附属病院でがんの治療効果と進行状況の確認のために、数回MRI検査をしたことがあり、そのことを思い出しました。MRI検査は、閉所恐怖症の人は苦手と聞いていましたが、高所恐怖症の私には抵抗なく受けることができました。2月7日にその結果を主治医から聞くことになっています。

★ 斎藤幸平『人新生の「資本論」』⑲

・ 斎藤は「ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)に注目する。

・ ≪<コモン>は、電力や水だけではない。生産手段そのものも<コモン>にしていく必要がある。資本家や株主なしに、労働者たちが共同出資して、生産手段を共同所有し、共同管理する組織が、「ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)」である。ワーカーズ・コープは、労働の自治・自律に向けた一歩として重要な役割を果たす。組合員がみんなで出資し、経営し、労働を営む。どのような仕事を行い、どのような方針で実施するかを、労働者たちが話し合いを通じて主体的に決めていく。それが可能なのは、社長や株主の「私有」ではなく、かといって「国営企業」でもなく、労働者たち自身による「社会的所有」だからである。・・・ワーカーズ・コープの運動は、欠乏を生み出す現在の資本主義を、「自由で平等な生産者の連合社会」によって置き換えることが可能であることを示した、とマルクスは言うのである。そして、ワーカーズ・コ-プを「“可能な”コミュニズム」とさえ呼んだのだった。・・・協同組合は、労働者たちが連帯することで、生産手段を自分たちの手に取り戻し、「ラディカルな潤沢さ」を再構築するからにほかならない≫と言う。

▼ワーカーズ・コープによる経済の民主化

≪20世紀の福祉国家は、富の再配分を目指したモデルであり、生産関係そのものには手をつけなかった。つまり、企業が上げた利潤を所得税法人税という形で、社会全体に還元したのである。その裏では、労働組合は、生産力上昇のために資本による「包摂」を受け入れていった。資本に協力することで、再配分のためのパイを増やそうとしたのだ。その代償として、労働者たちの自律性は弱まっていった。資本による包摂を受け入れた労働組合とは対照的に、ワーカーズ・コープは生産関係そのものを変更することを目指す。労働者たちが、労働の現場に民主主義を持ち込んでいくことで、競争を抑制し、開発、教育や配置換えについての意思決定を自分たちで行う。事業を継続するための利益獲得を目指しはするものの、市場での短期的な利潤最大化や投機活動に投資が左右されることはない。力点は、「自分らしく働くこと」だ。ワーカーズ・コープでは、職業訓練と事業運営を通じて、地域社会へ還元していく「社会連帯経済」の促進を目指す。労働を通じて、地域の長期的な繁栄に重きを置いた投資を計画するのである。これは、生産領域そのものを<コモン>にすることで、経済を民主化する試みにほかならない≫。

  • そのようなワーカーズ・コープの事例をいろいろ挙げている。≪・・・スペインのモンドラゴン協同組合は歴史が古く、有名で、七万人以上の労働者が組合員として参加している。日本でも、介護、保育、林業、農業、清掃などの分野でワーカーズ・コープの活動は40年近く続いている。その規模は15000人以上だ。資本主義の牙城であるアメリカにおいてすらも、ワーカーズ・コープの発展が目覚ましい。オハイオ州クリーブランドエバーグリーン協同組合、ニューヨーク州バッファロー協同組合、ミシシッピ州のコーポレートジャクソンなど、住宅、エネルギー、食料、清掃などの問題に取り組む市民の活動がコミュニティを再生しようとしている≫。
  • そして≪・・・貧困、差別、不平等を作り出す資本主義に抗して「誰も取り残されない」という観点から、協同組合が社会全体を変えていくひとつの基盤になることができるのは間違いない≫と言う。

GDPとは異なる「ラディカルな潤沢さ」

・ ≪「〈市民〉営化」による電力ネットワークや協同組合は、ほんの一例にすぎない。教育や医療、インターネット、シェアリング・エコノミーなど「ラディカルな潤沢さ」を取り戻す可能性はいたるところに存在している。例えば、ウーバーを公有化して、プラットフォームを<コモン>にすればいい。新型コロナウイリスのワクチンや治療薬も、世界全体で<コモン>にすべきだろう。<コモン>を通じて人々は、市場にも、国家にも依存しない形で、社会における生産活動の水平的共同管理を広げていくことができる。その結果、これまで貨幣によって利用機会が制限されていた希少な財やサーヴィスを、潤沢なものに転化していく。要するに、<コモン>が目指すのは、人工的希少性の領域を減らし、消費主義・物質主義から決別した「ラディカルな潤沢さ」を増やすことなのである≫。≪<コモン>の管理においては、必ずしも国家に依存しなくていいというのがポイントだ。水は地方自治が管理できるし、電力や農地は、市民が管理できる。シェアリング・エコノミーはアプリの利用者たちが共同管理する。IT技術を駆使した「協同」プラットフォームを作るのだ。「ラディカルな潤沢さ」が回復されるほど、商品化された領域が減っていく。そのため、GDPは減少していくだろう。脱成長だ≫と言うのである(続く)。