なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

無言館

 数年前の夏期休暇に、信州上田から一時間ほど松本方面に入ったところにある鹿教湯温泉の小さな宿で三泊四日を一人で過ごしました。一人でゆっくり考えたかったからです。ただ一つだけ行きたい所がありました。戦没画学生の絵が展示されている無言館です。
 
無言館には、鹿教湯温泉からバスで上田電鉄下之郷駅まで行き、上田電鉄に乗換え塩田町駅下車バスで行くことができました。三日目の朝宿を出て午前十一時には無言館に入れました。二時間ほど絵や遺品を観ることができました。ただ次々に来館者があり、中には団体で大きな声を出す人もいて、係りの人に注意される場面もありました。
 
そういう点では、ゆっくり静かに思い巡らしながら鑑賞することはできませんでしたが、前から一度是非行きたかったところでしたので、自分として貴重な時間を過ごせたと喜んでいます。無言館を観た後、信州の鎌倉と言われているこの地域に点在するお寺を幾つか訪ねて、別所温泉駅に出ました。そこから来た道を戻って宿に帰りました。
 
さて、無言館を観ての私の想いは複雑でした。この無言館を開設した館長窪島誠一郎の言葉、《それぞれの画学生が遺した「一枚の絵」には「私たちに告げたかった言葉」があり、その「絵のせつない叫びに耳を傾け」ないまま戦後の五十年間を過ごしてきた私たちの怠慢への侘び》には共感できます。だがその上に、私には従軍した画学生の絵の向こう側にいる無辜のアジアの人々の涙と叫びが迫ってくるように思えてなりませんでした。