なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(15)

 昨夜NHKクローズアップ現代を観ていました。福島の詩人の方で和合亮一さんという方のことを取り上げていました。最後の方はうとうと寝てしまいましたが、和合さんは、あの大震災の後の福島のさまざまな風景を写真に撮ったり、被災した人びとを訪ねてお話を聞いて、この大震災が何であったのかを、「被災地福島を詩で記録する」作業に取り組んでいるそうです。被災の現実は言葉で表現できない苛酷なものだと思いますが、その現実を言葉で表現して残さない限り、忘却という渦の中に消えてしまうものが多いに違いありません。
 私は、この和合さんの取り組みをテレビで観ながら、以前ベトナム戦争終結した頃にお聞きした、ベトナム人の子守唄について思い出しました。ベトナムは古くは中国の侵略にはじまり、1000年も諸外国の侵略の脅威の中にあったというのです。そのベトナムでは、母親が乳児の頃から、農作業をしながら背負った子どもに歌う子守唄は、諸外国からの侵略の歴史とその解放への想いであるというのです。ベトナム戦争のとき、近代兵器を駆使して襲い掛かるアメリカの北爆にも屈せず、ベトコンがゲリラ戦で米兵を苦しめたその不屈の精神は、幼い頃から子守唄を通して体で覚えた侵略を許さない国を想う熱意にあるというのでしょう。
 過日ある集会で福島の母親が、「子どもの命を守らないで、国は何を守るというのですか」と訴えられました。この言葉も心にしっかりと記憶して、子どもの命を守る社会を創っていきたいと思います。
 以下、「父北村雨垂とその作品(15)を掲載します。
 
父北村雨垂とその作品(15)
 
「私と いふもの」(続き)
 
血と錆を枕木に 鉄路は 月をゆがむ
感情の斜線がプラットホームに並ぶ
おんなの生態を笑え カメレオン
点である 線である 無量のいのちである
メタン瓦斯 次は 私が昇天する
 
じぐざぐに影往く 月に 故郷の歌
若い男女が 倫理を創造した 会話
遺書の結語に 觸角のなかったこと
論説のページに見ゐる 白痴のおもだち
蜘蛛の虎班 太郎花子の 春
 
辻に停つ青年よ 勇悍な 夢遊病
刑場の黒い土よ 史書は白い 嘘だ
印度更紗の構図 いらだつ平和
水平線の影に ひとのうごめく 余白
魔の踏切を 月と野犬が 哄笑した
 
墓石がひとつ 歴史を停めた 形態
思想と赤く 氷河のツラに なぐりがき
私と共に 太陽も孤獨ではないか
辯證法萬才 黒い花輪も 飾られた
 
佐々木巌流の構え 見事な蟷螂の構え
蟷螂は見事 マルクスの書を読んだ
死ぬといふ存在 びしりと鳴るカルタ
冬にそむき 夏にもそむく 夢の中の女
山が光る 冬が消えてゆく あかし
 
雄鶏は いまなほ時刻 ( とき )をつくる 古事記
葛藤に生きろ ソクラテスは愚直
強慾な夢は 錦旗を創ることか
自覚のシルエットだよ 孤影
雄蕊と雌蕊で 童謡が生れた
 
おどるけだもの ユダヤとは何事
曲線のない 制服の娘に 聖女の俤
おとめごころよ 松の花粉に 風がある
この父を 不逞とも あわれとも想え
その柿で 蟹を泣かすな 青年の諸君
 
ともえにおどる おやのいのちと 子のいのち
 
辯證に 信を置けよと おぼろ月
 
蛇のかほ 聖者のかほの 相似たり
あたらしい 表を書く 灯の消える まえ