猛暑も今日で一段落と、天気予報では言っていますが、そうなると少しホットできるのですが、どうでしょうか。「父北村雨垂とその作品(21)」を掲載します。
父北村雨垂とその作品(21)
「試作 ふるさと」
ふるさとの
風には知恵の
樹を父に
ふるさとの
井戸には母の
いまも
むかしも
ふるさとの
夕餉の煙り
寺の鐘
ふるさとに
やがては還 ( かえ )る
石となる
ふるさとのシーレーノスは
「力 ( かあ )」と啼く
唖者 (おし)
以下父の作品ノートには、「私は、コトバを 文法から何時も開放する」と記されていて、句が続いています。句の前に赤字で「下の対は対流№3に提出」と記されており、句の中には下に赤字で「対」と記されているものがあります。その後の句の中には下に「研」と記されているものもあります。
おそらく「対流」は川柳家仲間の機関紙ではないかと思いますし、「研」は川上三太郎主宰の「川柳研究」ではないかと思われます。
常山の蛇はアラブへ雲に乗る 対
木葉菟木佛は法?應と啼くも
(?の字は「幸」辺に「卩」ではないかと思われます。)
椿一花「お吉 ( きち )泣くな」と背を叩 ( たた )く 対
故里の父よ母よと掌に土を 対
灰色の泡沫 ( あわ )の彼女等は海に沈み
キャンバスに狂気 孵らず落暉還らず 対
恍惚の浮雲 ( くも )に火葬場の(乱れた?)汚れた生花 対
失明の人は枕に目を借りる 対
神よ長生の素粒子が出たそうな 対
日髙の隊列を猫柳がのそき
春の水 楞厳笑って説をなすや
犬の子に蛇の一歩も退かぬ構え
陽も石も楞厳も笑う淵の風 対
白鷺もとまどい勝ち黄昏れて 対
天台と識って咲いたか蕗の薹 対
牡丹に佇ち幾太郎茂雄の墓に佇ち 対
天の(に)主を探せ角 ( つの )だせ蝸牛
乞食の一喝も牛乳 ( ちち )も水臭き 対
猫柳ニンフは山羊の乳盗りに 対
北風に歌う椿の原色だ 雨だ 対
同情と羞恥も靜い血でニーチェ 対
知恵のない卵で蛇が頓死した(する)
日日生きる三百六十五を死んで
力 (かあ)と啼く唖者 ( おし )の鴉 寺の鐘 対
(力は漢字の力(ちから)でかあとルビをしてください)
神よ一億分 ( なが )の ( い )一秒 ( き )の素粒子が出たそうな 対