なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

黙想と祈りの夕べ通信(358)復刻版

 黙想と祈りの夕べ通信(358)復刻版を掲載します。2006年8月のものです。


       黙想と祈りの夕べ通信(358[-45]2006・8.6発行)復刻版


 今年も8月がやってきました。戦後61年になります。既に半世紀以上前になった太平洋戦争ですが、

どんなに時間が経過しても、忘れてならないことは、記憶しておかなければなりません。8月6日の日曜

日は、ヒロシマ原爆投下の日です。今年1月に神奈川教区の基地・自衛隊問題小委員会主催で岩国基地

アーがあり、私は委員ではありませんでしたが、誘われて参加しました。岩国基地に瀬戸内海を埋め立て

て滑走路が作られていて、それがほぼ完成間近の状態でした。私はその場所に立って、まだ埋立地の広漠

とした広大な荒野を思わせる風景に圧倒されたのを思い出します。その後岩国基地に厚木から空母の艦載

機を移すという米軍再編に対して、岩国市長は市民投票を行って、圧倒的な多数で否決しました。しか

し、住民の意志をどれだけ国が重んじるのか、危ぶまれる状況があり、岩国ではこれからもその厳しい闘

いを続けていかなければならないでしょう。岩国基地ツアーでは、翌日広島の原爆ドームのある平和公園

と資料館を見学するプログラムが組まれていて、私はその時生まれてはじめて広島の地に身を置きまし

た。町並みは地方都市のものと変わらず、平和公園も表面的にはどこにでもある少し大きな公園のたたず

まいをしていましたが、原爆ドームをはじめ公園の中にある記念碑、そして資料館を通して、想像力をか

き立てられていくにしたがって、たとえば原民喜の「コレガ人間ナノデス」や「水ヲ下サイ」の風景が重

なってきました。

 「コレガ人間ナノデス/原子爆弾ニ依ル変化ヲゴランクダサイ/肉体ガ恐ロシク膨張シ/男モ女モスベ

テ一ツの型にカエル/オオ ソノ真ッ黒焦ゲの滅茶苦茶ノ/爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ/

「助ケテ下サイ」/ト カ細イ 静カナ言葉/コレガ コレガ人間ナノデス/ニンゲンノ顔ナノデス」

「水ヲ下サイ/アア/ 水ヲ下サイ/ノマシテ下サイ/死ンダハウガ マシデ/死ンダハウガ/アア/タ

スケテ タスケテ/水ヲ/水ヲ/ドウカ/ドナタカ/ オーオーオーオー/ オーオーオーオー/天ガ裂

ケ/街ガ無クナリ/川が/ナガレテヰル/オーオーオーオー/ オーオーオーオー/夜ガクル/夜ガクル

/ヒカラビタ眼ニ/タダレタ唇ニ/ヒリヒリ灼(や)ケテ/フラフラノ/コノ メチャクチャノ/顔ノ/ニ

ンゲンノウメキ/ニンゲンノ」

 日本の国は爆心地から2キロ以内にいなかった人には被爆者としての補償をしてきませんでしたが、最

近補償を受けられず原爆症を苦しんでいる原告の訴えた裁判で国の敗訴が続いています。当然ではないか

と思います。しかし、日本軍「慰安婦」とされた人々をはじめ、日本の侵略戦争によって被害を受けたア

ジアの人々に対する日本の国の国家賠償は全くなされていません。まだまだ太平洋戦争に対する戦争責任

を果たさず、曖昧にしたまま、戦後責任の問題もいいかげんにして 現在の政府はアメリカと一体となっ

て日米軍事同盟の強化の方向に進もうとしています。

 「二度と再び戦争をしてはならない」と、太平洋戦争を経験した人の中には、不戦の誓いをして、戦後

の歩みをしてきた人も多いでしょう。しかし、戦後61年経って、そのような人の多くは天上の人にな

り、戦争体験者が少なくなっています。そのような現在だからこそ、私たちは、「剣を取る者は、皆滅び

る」(マタイ26:52)と語られたイエスの平和を継承して、戦争に結びつく動きにきちっと反対していき

たいと思います。