なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

船越通信(607)へのコメントに対する応答

船越通信607に対する以下のようなコメントをいただきました。

 

その按手志願者に踏み絵を踏ませるような質問には違和感をおぼえます。どのような考えを持つ方でも切り捨てないのが合同教会ではないでしょうか。按手後の対話ではなぜいけないのでしょうか。多様な立場を尊重してほしいです。また、この動議はハラスメントのように感じました。補教師に対する優位性を抱く証左に見えます。

 

教区総会での按手礼式執行保留の動議について、この方のような反応があることは予想していました。この方は「どのような考えを持つ方でも切り捨てないのが合同教会ではないでしょうか」と言われます。そのこと自身はその通りだと思います。しかし、ではなぜ、私は聖餐という神学的な問題で免職処分を受け、教団から切り捨てられたのでしょうか。それは、私を戒規免職処分にした教団の方々は、教団を「どのような考えを持つ方でも切り捨てない合同教会」とは、考えていないからです。この方々は、「(教団)信仰告白と教憲教規を遵守」しないと(私も、教団信仰告白と教憲教規を遵守しないわけではないのですが)、一方的に日本基督教団の信徒・教職にふさわしくないので、処分をしてもかまわないと思っているのでしょう。そうでなければ、私が戒規免職処分になることはありませんでした。その私を、神奈川教区は、教団は認めていませんが、一人の教師として処遇してくれています。そして教団総会に、私の戒規免職撤回の議案を出し続けてくれています。それは、神奈川教区が、「どのような考えを持つ方でも切り捨てない合同教会」として日本基督教団を考えているからだと思います。そのことに私は感謝しています。

 

なぜ今回の教団総会で按手礼保留(保留であって、反対ではない)の動議が出たのかと言えば、神奈川教区は、神奈川教区への転任教師や准允・按手志願者を対象にしたオリエンテーションを持っています。このオリエンテーションの要綱は下記の通りです。

 

神奈川教区オリエンテーション要綱

 

1、目的

 日本基督教団はその内に多くの問題をかかえており、神奈川教区は教区として理解のもとに、それらの問題を担おうと努力している。現行の日本基督教団教師検定試験も問題をかかえて実施されており、そのことの故にさまざまな立場の受験拒否を出すことになっている。この検定試験を受験し、准允、按手を受けられる方、また他教区より転任される方にこれらの問題を共に担ってもらうことを目的にこのオリエンテーションを実施する。教区(常置委員会や教区総会)の推薦や承認等をめぐる討論の場に志願者が有意義に参加できるように同委員会はオリエンテーションを準備する。ただし、教区内の多様な意見がこのプログラムに反映するように配慮する。

 

2、対象

 a 他教区からの新任教師

 b 按手・准允の志願者

 c 正・補教師検定試験受験者

 

3 内容

 ① 教団成立の歴史とその問題への理解

 ② 神奈川教区の状況と教区形成基本方針の理解

 ③ 教団問題・教師検定問題と受験拒否の理由への理解

 ④ 教区宣教の現場と問題への理解

 

4 年間実施計画及びその対象

 1月 教団成立の問題(戦責告白、六・九部問題、教師検定問題(c))

 4月 教区の状況・教区形成基本方針(abc)

 7月 現場見学(開拓伝道地・病院・ホーム・工場等) (abc)

 8月 教団問題(万博・東神大)、受験拒否問題(bc)

11月 現場見学(寿地区・川崎・横須賀・差別問題等) (abc)

 

5 確認事項

 1)この要綱に基づき、各神学校・教会に連絡し、対象者への連絡を依頼する。

 2)最低年1回、教区内全教会に往復はがきで対象者の有無を調査し、連絡の徹底に努める。

 3)受験志願者、按手・准允志願者に出願手続き以前にこのオリエンテーションに出席することを要請する。

 4)常置委員会はオリエンテーション委員を選任し、オリエンテーションを実施する。

 5)オリエンテーションの資料集・ガイドブックを作成する。

 

                                  以上

 

この要綱に基づいて、神奈川教区には常置委員会が設置しているオリエンテーション委員会があり、コロナ感染拡大時期である2020年度、2021年度を除いて、年4回オリエンテーションを開催しています。毎年第一回目は必ず神奈川教区形成基本方針(下記参照)についての学びをしています。また毎年一回は神奈川教区が抱えている宣教の現場研修として、在日コリアンの歴史と現在の学び(川崎で)、横浜寿町の寄せ場での研修(教区の寿地区センターで)、横須賀や厚木・座間での自衛隊・米軍基地問題の研修行なっています。オリエンテーションへの参加は、神奈川教区に転任して3年間をめどにしていますので、現場研修も3年間サイクルになっています。他の年2回、3年間で6回のオリエンテーションで、上記要綱4に記されている教団の70年問題と言われる諸問題をテーマに開催しています。ですから、教区への転任教師と准允・按手志願者には3年間オリエンテーションに出席してもらって、日本基督教団が合同教会として多様性の一致をめざしていくことにおいて一つであることを確認してもらい、日本基督教団の地域的共同体としての神奈川教区にあって、立場や考え方は違っても共に歩んで行くことを願って、神奈川教区ではオリエンテーションを設置しているのです。

 

神奈川教区形成基本方針

 

前文

 

日本基督教団神奈川教区は、1965年 東京教区より分離独立し、教区としての歩みを始めた。そして「教区の教会性の強調」「信仰告白の実質化」を方針に掲げ「一つの教会」となるためのさまざまな努力を重ねられてきた。

 しかし1969年以来、万博キリスト教館出展問題、東京神学大学への機動隊導入問題等を契機にして教団成立以来十分に自覚・検討されてこなかった諸問題が一気に噴出する状況となった。すなわち、教区においても諸教会やキリスト者の間に、福音理解や教会観、信仰告白に対する態度や宣教の理解、さらには「教区とは何か」等、重要な問題についての理解に大きな相違があり、それらが具体的な諸問題との関わりで表面化して、多様な立場や主張が対立し合うことになった。そのため、従来の「教区基本方針」では教区総会すら開催できないという状況に立ち至った。

 そこで教区諸機関における、「1970年度基本方針」案および修正案をめぐる精力的な議論を経て、1971年に第20回教区総会が開催され、教区内に相違や対立がある現実を率直に認めると共に、それらの相違や対立を抱えつつも尚、一つの教会であることを求め、真に「一つの教会」を「形成」することを目指すことを形成途上の教会であることを確認した。このようにして採択されたのが、今日の教区形成基本方針の原形である。

 その後、教区においては「教師検定にかかわる問題」「教区の教会人事への介入を巡る問題」等さまざまな問題が起こったが、いずれもこの方針に沿ってそれらと関わるように努力がなされてきた。しかし今日、教会を取り巻く状況も大きく変化し、教区内の教職・信徒の世代交代も進む中で、教区形成基本方針を採択した事情や、提起された問題や自覚を迫られた意識、またここに盛られた願いや精神を直接に知り得る者も少なくなった。そこで、数年前から教区形成基本方針の再検討を求める声が強くなり、今日の状況に即した方針が求められるようになった。

 その再検討に当たり心すべきことは、この教区がさまざまな困難な状況の中で重ねてきた20数年の歩みを踏まえつつ、現在および将来に向かう新しい展開を望むことである。すなわち、新しい状況への適応を急ぐあまり過去の状況、特に今も未解決のまま継続的に問われ続けている諸問題を忘れ去ったり、切り捨てたりしないこと。同時に、過去から引き継いでいる問題が新しい状況の中でどのような展開をうながしているかを探り求めることにより、前進に寄与するものとなることを求めたい。

 このような認識と願いをもって、以下のように教区形成基本方針を定める。

 

本文

 

 我々は、1941年の日本基督教団の成立、1954年の「教団信仰告白」、1967年の「第二次世界大戦下における日本基督教団の責任についての告白」、1969年の日本基督教団と沖縄キリスト教団との合同等、今日改めて問い直すべき内容を含む課題を負う教団の現実を踏まえ、理解や方法論の対立を伴うその他の諸問題についても、意見を誠実につき合せ、対話を重ね、聖霊の導きを求めつつ、なお一つの地域的共同体としての教区形成を目指すことを基本方針とする。

 我々は既に、この状況の中で時と地域と課題とを共有している。さまざまな理解の相違や対立は存在する。しかし我々は共に集まり、共に祈り、共に語り合い、共に行動することが許されている。我々は対立点を棚上げにしたり、性急に一つの理念・理解・方法論に統一して他を切り捨てないよう努力する。忍耐と関心をもってそれぞれの主張を聞き、謙虚に対話し、自分の立場を相対化できるよう神の助けを求めることによって、合意と一致とを目指すことができると信じる。

 我々は、合同教会としての形成、教会会議、今日の宣教、教会と国家、教会と社会との関わり、差別問題、さらに教区運営・教区財政、地区活動、諸教会の宣教の支援等、教区として取り組むべき諸課題を担い、当面合意して推進し得る必要事項を着実に実施できるようにと願うものである。

               

 【1994年2月26日第91回教区総会にて制定】

 

実は、今回神奈川総会で按手礼志願者の一人の方に保留の動議がでたのは、この方は、上記オリエンテーションに3年間一度も出席せずに、一方的な意見を述べましたので、今回は按手礼を保留にして、話し合いをしてから改めて按手礼を受けてもらった方がよいのではないかということです。いたずらのにただ意見が違うだけで、保留の動議を出したわけではありません。私の船越通信にコメントして下さった方は、按手礼受領後に話し合いをしたらと言われていますが、私は神奈川教区に30年近くいますが、この方のような人は按手受領後には,神奈川教区には連合長老会系の教会がある程度の数ありますので、それらの教会が教団内教派活動のような形で独自の会をもっているようですので、そちらには出席しているかもしれませんが、ほとんど教区の交わりには出て来ません。

 

今回の教区総会で按手礼志願者の一人の方に、按手礼保留の動議が出たのは、この方を切り捨てるためではなく、もう少し話し合いをしてから、按手礼を受領してもらった方がよいのではないかということです。私は教団から切り捨てられていますので、切り捨てられた者の痛みはよく分かっているつもりです。私は教団年鑑の教師名簿からも除外されています。切り捨てるということは、そういうことです。

 

教団の中で一緒にやっていきたいので、そのためにはもう少し話し合ってからではどうでしょうか。そういう思いで、保留の動議がでたのだと私は思っています。それゆえ、その動議に私も賛成しました。コメントして下さった方は、この動議が補教師に対する優位性に基づくハラスメントに感じられた、と言われていますが、この動議はそもそも信徒である議員の方から出ていますので、この方の言う、「この動議はハラスメントに感じられた」ということはよく分かりません。

 

私の船越通信607を読んで、この方と同じような思いを持たれた方も、他にもいるかも知れませんので、この方のコメントに対する私の応答を書かせてもらいました。