なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

ピースおばあさん

 私は国会前の辺野古新基地建設反対座り込みに時々参加していますが、その座り込みに何時も参加している80歳過ぎのSさんという方がいらっしゃいます。この方は、着ている上着にも、帽子にも、荷物入れにも「ピース」という文字を書いて、それを着てどこでも行かれます。私が数年前にその座り込みではじめてお会いした頃は、憲法9条の条文を書いた布切れを必ず持って来て、国会前の道路を通る人や車に向ってそれを掲げて、憲法9条遵守を訴えていました。今は沖縄の基地撤去、辺野古の新基地建設反対を中心に訴えています。私などは座り込みに行っても、だまって座り込んでいるだけが多いのですが、その方は道を通る人に向って、「沖縄から基地を撤去しましょう。」「辺野古に新しい基地をつくることは反対です。」「カンパをお願いします。」と声をかけています。筋金入りの平和運動家です。国立に住んでいるそうですが、毎週月曜日と木曜日に国立から国会前までやって来ます。健康が優れないときには、入院することもありますが、しばらくすると退院して、ふらふらしながら座り込みを続けています。おそらく体が動く限り、誰が何と言っても、平和をつくり出すために活動し続けていくことでしょう。
 
 先週は528日に出た「米軍普天間飛行場移設に関する共同声明」への抗議の集会があり、3日、4日と続けて私も参加しました。4日夜は鳩山首相辞任、菅首相誕生を受けて「普天間基地辺野古移設は白紙に!」を訴える緊急の集会が国会前でありました。私は前日3日に参加した中野ゼロホールで開かれた沖縄・緊急意見広告報告集会で4日の集会を知り参加しました。本当に緊急の集会だったようで、3日の集会でのアッピールでは「国会をキャンドルの灯で囲みましょう」ということでしたが、とてもそこまでは人が集まりませんでした。国会を囲むには4面の道路を人が並ばなければなりませんが、せいぜい一面の道路に並んだくらいです。私も参加を迷いましたが、この時期なのでと思って参加しました。その参加者の一人に「沖縄から基地をなくそう」と書いた、手を広げて持てるくらいの手製の横看板を首から吊るして、国会前の道路を通る人や自動車に向かって、一生懸命訴えているおばあさんがいました。
 
集会が終わって、帰りがけにそのおばあさんに私は声をかけました。「その看板はいつも持ち歩いているのですか」と聞きました。私の質問にそのおばあさんは答えて、「そうです」と言って、「私は語り部ですから、どこにでもこれを掲げて、出会う人に語りかけているのです。」と、ニコニコしながらおっしゃいました。前述の「ピース」おばさんのSさんと言い、このおばあさんと言い、変わり者のおばあさんと言ってしまえばそれまでですが、私には衝撃でした。心から沖縄の痛みを自らのこととしてとらえていなければ、生きている限り語り部としてあり続けたいという執念のようなものを内に秘めて、明るく語ることはできないように思えるからです。このお二人は戦争世代でしょうから、戦前の時代に絶対に二度と再び戦争はやってはならないという何らかの痛切な体験をお持ちなのかも知れません。私のような者の平和への思いは、どちらかといえばかくあるべきだという理念が先行していると思いますが、このお二人のおばあさんは体の芯から平和への思いと行動が出て来ているように思えてなりませんでした。