なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(5)

父北村雨垂とその作品(5)
 
今日は「燈台」「さくら」「道化師 ( ピエロ )」という作品を紹介します。
 
「燈台」
 
燈台は まっかに陽を浴びる 非情のまま
水平線に 春が来た 冬が来た 燈台
燈台の 獨語が青空に消えた
燈台は 精神年令が若い 眞晝
 
潮騒に 燈台の神経が冴えた 静寂
死のロマンスを 燈台は見たが 言わぬ
燈台は 孤獨を吹きとばせ 吠えろ
燈台は 赤い神経のない 秋だった
 
「さくら」
 
花吹雪 生きる悲願の 核分裂
花吹雪 哲学は死ね 運命も死ね
花吹雪 掌に 死んだ児を踊らせた
庭に ひと株の桜が咲いた 家庭裁判所
浮かぶ桜花 思想のミイラ 水溜り
 
花吹雪 庶民 私の倖を見た
花吹雪 われわれの夢も 空轉した
伽羅を焚け 万葉を描け 山桜
花吹雪 郷愁は 古い倫理であろうか
(よる)は 野犬の背にははらはらと さくら
 
道化師 ( ピエロ )
 
君も道化師 ( ピエロ ) 私も道化師だ 道化師 ( ピエロ )
赤いテープだ 黒いテープだ 道化師
カマキリの これも道化師の 夫婦だな
プリズムの目玉が欲しい 私は道化師
いっぱいに 夕陽を浴びて 鳴かぬ道化師
群集の 髑髏に踊る 君は道化師
道化師 見ろ 油一滴水に浮く
道化師に とうとう 拘引状が来た
 
 私の鶴巻のマンションに、父の筆で書いた短冊があり、そこにある句が「潮騒に 燈台の神経が冴えた 静寂」です。ですから、この句は父が気に入っていたものの一つではないかと思われます。