なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(57)

 今日は「父北村雨垂とその作品(54)」を掲載します。現在父が遺した作品ノートの2冊目を順次このブログに載せていますが、2冊目はこれで終わります。以下の句の前後には付加削除が施された習作と思われる句がありますが、これらの句はここには掲載しないことにしました。

     父北村雨垂とその作品(57)

  連作「市場の哲学者」

1、正札が揺れる市場の哲学者

2、池を静かに歩くわくらば

3、魚跳ねてわが鉤殿に鐘の音や

4、アリアドネーの寝息まぶたに

5、芝髪の男は月を木の葉木

6、峯にいのちの疾る咆哮(とうぼえ)

7、国境に無門の風がそよと吹く

8、人の気配をみるか白鳥

9、亡命の佳人(ひと)今還る夫の骨壷(つぼ)

10、昨日の今日に分裂(ならぶ)のアメーバ

11、熊の子を圍む神話のおころりよ

12、毬藻に咲いた夢のおさな児

13、雨は野菊浅間山荘鳴動(やまなり)す

14、こころも千日(ちじ)に重量の月

15、広嶋に悪夢の汚点(しみ)や星条旗(トルーマン)

16、誰にもみせぬ生地のネガチブ

17、太平の蜥蜴にやがて尾が生えて

18、丸い四角に狂気(くる)う若獅子


 夢を跨いで眞理は哄笑した

 一握の土にも梅の花
 
 青い血の意志に 眞理を 稿を 夢に
 
 喜劇と悲劇 ことばと神は分裂した
 
 分裂の獅子は眞理の言葉を探す
 
 群集の思想の泡沫よ 鉛色の運河よ

 正午が躍る 群集の 想念の破片
 
 公孫樹の風に法衣を捨てた羞恥を捨てた