なんちゃって牧師の日記

説教要旨と牧師という職業で日々感じることを日記にしてみました。

父北村雨垂とその作品(89)

 今日は「父北村雨垂とその作品(89)」を掲載します。

 今回掲載します「川柳研究合同句集」に出した句は、幾つかは既にこのブログに掲載してあると思いますが、父としては自信のある句ではなかったかと思われます。下記の中にあります「弁証の諸君 見給え 無精卵」は、ある現代川柳の本の中で評者は父の代表作としてあげている句です。「ボロ靴の思想は昇天したよ 野菊」という句も、父の句の中ではよく知られているものの一つではないかと思います。私は、「神のミイラと 握手を拒む ニーチェの骨」を面白く読みました。今回は掲載する句の数を少な目にしました。以下の父の句をよく味わってもらいたいと思ったからです。

                 北村雨垂とその作品(89)

   川柳研究合同句集


 ボロ靴の思想は昇天してよ 野菊

 純粋な灰色に 梟が 啼いた

 プリズムとレンズに浮かぶ 古事記の袖

 歴史の断層を 夏の富士に見た

 渦潮と駆ける回帰や 常春(きづ)藤(た)の血

 飼えば餌を爭う 鯉と成り下り

 弁証の諸君 見給え 無精卵

 一ツ目の月に 寿町 涅槃の街

 遂に踵(カカト)を 猿奴 眞直ぐ 地獄行き

 悲鳴を奪られ 臓器を盗られ 肉屋の鉤

 遠吠は 豪雨を疾(はし)る 秋刀魚の骨

 絶望を握る 荒野の 腕時計

 蛇を噛み切る 血みどろの 蕊(しん)

 分裂の風景に 蝸牛の触角(ねむり)

 冬は月も呪っているぞ 吠えろ 犬

 画家よ 私なら一切を無色で描く

 鈴のある 猫の横死に 飄々と野犬

 神のミイラと 握手を拒む ニーチェの骨

 太平や 蜥蜴(とかげ)に またも尾が生えて

 丸い四角に 狂う 若獅子(しし)