今日は「父北村雨垂とその作品(90)」を掲載します。
この句の中にも既にこのブログに掲載してあるものが含まれているようです。ご容赦ください。私の父親の実存には、時代や社会に迎合できない何ものかがあったようです。下記の句の中にあります「神から盗って 國旗などたてた 馬鹿奴」という句には、そのような父の精神が表れているように思われます。父は戦時中町内会の責任のある役割を担っていて、町内の召集令状がきた青年を戦地に送り出したことの責任を感じて、戦後は一切町内から身を引いたようです。彼なりの戦争責任のとり方だったのかも知れません。
父北村雨垂とその作品(90)
ふあうすと 全国川柳作家年鑑 1978年(昭和53年)10月
双頭の頸は 互の日誌を重ね
亜希子 そのとき 幻想(ユメ)と力(チカラ)を水平に
神聖な接吻(キッス)を月に 亜希子 浜風
媾曳の夜は 咆哮(ほうこう)の 北風(キタ) 熄(や)まぬ
心臓を羞恥に沈め 亜希子の汗
亜希子 法悦 侍者 岡本一平など ー など
ガンジズの砂に 神話を 亜希子 掌に
亜希子 西風(ゼピロス) 本幵項目などを掌に
亜希に 河 ヨーガの口唇(くち)に 棗(ナツメ)の皮
雲の歴史(れきし)を 亜希子に綴る 丘の風車
ふあうすと 全国川柳作家年鑑 1979年(昭和54年)10月
豊満な乳房と 月が顔赤らめ
陽は西に 死んだ時計の面に 夢
眞理を探せ コトバの尾骶骨を探せ
プリズムとレンズに浮かぶ 古事記の袖
頂天は濃霧(のうむ)に 渓谷(たに) を尾骶骨 流れ
君識るか 火蛾に 眞昼の扉を啓(ひら)く
門標に 世界と名乗る 一軒家
その鍵と 神のミイイラは 萬里の淵
太陽は枕を 鐘の鳴る丘に
帰れ 野犬(いぬ) 影 百萬の ひとつの俺
藍 14 1981年3月
赤い水 青い水 国境とは 会話
神から盗って 國旗などたてた 馬鹿奴
月に見せたか 砂漠の孤児は 簪(かんざし)を
歴史の風に 野菊 神たち 楚々とあり
天国と 祖国 卍に ブロイラー
みのむしの面(つら)と 無学を 嗤(わら)うのみ
闘争の孤児たり 父を 母を 斬れ